サツマイモの世界に浸る『べにはるか集中シンポジウム~べにはるかの現状と今後を考える!~』レポート

はじめまして。
“サツマイモと暮らす。”がモットーの宮岡です。
サツマイモ好きが高じ、晴れてさつまいもカンパニーの活動にアシスタントとして携わらせていただくことになりました!
どうぞよろしくお願いします。

さて、サツマイモといえば、最近スーパーの陳列棚やコンビニのお菓子コーナー、更にテレビ番組でもよく見かけるようになりました。
正にこれからの季節(秋~冬)が旬のお野菜ですよね!そんなサツマイモの魅力と今後の課題に迫るサツマイモ産業振興セミナーが、9月1日(土)東京都豊島区にある、女子栄養大学・駒込キャンパス生涯学習センターで行われました。

サツマイモには、<べにはるか>や<べにあずま>、さらに<あんのういも>など様々な品種があるのをご存知でしょうか!?
今回はその中の<べにはるか>をクローズアップした、『べにはるか集中シンポジウム』が開催されるということで、足を運んできました!

べにはるかとは、(独)九州沖縄農業研究センターによって2010年3月に品種登録されたサツマイモの品種の1つです。
特徴は、外観の美しさと焼き芋にした際のねっとりとした食感、そして非常に甘みが強い点だとされています。今や品種の中でも人気を博していて、べにはるかを基にしたオリジナルブランドが各企業から多く産出されています。
(参照元: http://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/satumaimo-Beniharuka.htm

セミナーは、講師に荒木田尚広氏、山川理氏、武智仁氏(講演順)を迎え、山田英次氏司会の元行われました。
このレポートでは、盛り沢山だった内容の少しをピックアップしてご紹介したいと思います。

講演1「べにはるかの基礎知識と現状の課題について」

まずは、講演「べにはるかの基礎知識と現状の課題について」からセミナーのスタートです。荒木田尚広氏(茨城県農業研究所作物研究室技師)が登壇されました。

“べにはるか”が出来てから起こった最大の現象は、「粘質で甘みが強いという品質から多様な商品開発が可能になり、1年中出荷が出来るだけでなく、消費者が季節問わずサツマイモを楽しめるようになったという点にある。」と話されていました。

べにはるかの食べ方として、加工した『干し芋』や、サツマイモ本来の味わいを満喫できる『焼き芋』等が挙げられますが、特に注目すべきは、『焼き芋』だと考えられています。
何故なら、べにはるかの『焼き芋』は、冷やしておいしいサツマイモとして話題になっているからです。
冷蔵庫や冷凍庫で凍らせてアイスのように食べる『冷やし焼き芋』は、夏の暑い時期でも焼き芋を楽しめるアイデアの1つです。
これにより、従来の秋~冬にかけてのサツマイモのイメージが、春夏も食べられるというように変化したとされています。

魅力いっぱいの“べにはるか”ですが、課題も残されています。
栽培土壌の維持管理や干し芋にした際の肉色の改良が必要なのだそうです。土壌の維持管理について荒木田氏は、「べにはるかは、窒素吸収量が多い為、土壌中の可給態窒素が減少し連作障害が発生する。これを回避する堆肥・緑肥などによる地力維持が必要になる。100年、200年先もサツマイモを作り続けられるよう、土が痩せすぎないように管理を行っていきたい。」とお話しされていました。更にサツマイモ産業の今後については、「色々な用途に使える芋が求められる。消費者がサツマイモの世界を広げられるようなラインナップ提供をしていくことが大切」と述べられていました。

講演2「べにはるかの開発とこれからの品種戦略」

続いて「べにはるかの開発とこれからの品種戦略」について、講師の山川 理氏(元九州沖縄農業研究センター所長)がお話しされました。

海外から日本にサツマイモを導入した人物には、野国総管(のぐにそうかん)、前田利右エ門(まえだうえもん)、青木昆陽(あおきこんよう)、久保田勇次郎(くぼたゆうじろう)がその名を連ねます。
私は、今回の講演を通じて久保田勇次郎の名を知ることができました!
山川氏は、久保田勇次郎について「海外のサツマイモを伝播してくれた重要な人物。他の3人と比べてあまり取り上げられない、知る人ぞ知る彼だが、この人がいなければ、現代に続く日本のサツマイモ文化は無かったかもしれない」と述べました。
また大正以前は、芋は美味しいと評判でしたが、大正以降になるとお腹にはたまるけれど不味いものといわれ不評になった時期もあったそうです。

更に講演の中では、べにはるかの誕生についても語られました。
かつてサツマイモは、工業原料の作物(でんぷん等)としての収穫が主でした。しかし時代の移ろいとともに食用品種の開発が成され、消費者ニーズの変化により“べにはるか”は誕生したとされています。従来の水分が少なめのパサついた食感ではなく、肉質はしっとり柔らかく、甘さは強めという、食べやすさを重視した品種になりました。
今後の課題として、「べにはるかが、紅まさり等の他の品種と比べて芋の風味が少ない点を品種改良によって解決していきたい」ということです。

山川氏は、サツマイモの研究で世界を旅し、「全体が火山島のランサローテ島のレストランでは、噴火口の地熱を利用して魚やサツマイモを焼く。魚とサツマイモの組み合わせは、栄養面からみても最高な組み合わせ。」と笑顔を浮かべました。
海外のサツマイモの食べ方を研究したら、面白い発見がありそうだなと思いました!

講演3「オルタナにおけるべにはるかの取組み」

セミナー終盤には、武智仁氏(株式会社オルタナ)による“オルタナにおけるべにはるかの取組み”の紹介があり、新しく開発に着手されている、干し芋の専用乾燥機や製造用機器についての興味深いお話が聞けました。
例えば、乾燥機は、天候に左右されない効率的な乾燥を実現させる為のものだそうです!株式会社和陽さんとのコラボ商品で、風量や湿度、重量度合いなど全てコンピュータが自動に行ってくれる優れもの。
製造用機器については、まだ全貌は明らかになっていませんが、“おもしろ焼き芋機”というキーワードが印象的でした。店先等で出会える日が楽しみですね!

終わりに、参加者からパネラーへの質問やセミナーのまとめが行われ、4時間のセミナーの幕は下りました。
商品を多様化することによって消費者の選択肢を増やしていくことや、日常的に食卓の上に並ぶような甘くないサツマイモをつくっていくことも今後の課題だと考えられています。

サツマイモの歴史は、約10年単位で変化し続けているといわれています。ちなみに現代は焼き芋が人気を博す、「第4次ブーム」とも謳われているとか。
品種1つに焦点をあてても色々な歴史が紐解け、物語を辿っていけるサツマイモ。奥深い世界で、これからも注目すべきところが沢山だなと感じました。実際に、専門家や企業の方と交流が出来るのもこのセミナーの魅力の1つです。今後も定期的に開催されます。専門家の方や、事業をされている方だけでなく、サツマイモ好きの方もぜひセミナーに足を運んでみてください!